こんにちは。
就職活動の時に見た大手の内定者インタビューや、テレビで華々しく取り上げられる“成功者の半生”。
そういう“夢を叶えた”エピソードに遭遇するたび、嫉妬の炎に焼き尽くされそうで、そっと目を逸らしてしまいます。
サナです。
子供の頃からの夢を叶えて、好きな仕事で食べていく。
そんな一本道のキャリアは、私から見てキラキラしていて眩しいくらいのものでした。
でも最近、その「夢を叶えた人」にも、意外な行き止まりがあることを知ったんです。
アナウンサーが語った「夢のその後」
今の仕事で、アナウンサーと定期的に関わる機会がある。
私が関わるその人は、いわゆる“看板アナウンサー”で、初めて会ったときには、自分が子供の頃テレビで見ていた存在を目の前にしてテンションが上がったものだ。
ある日、難しい顔をして歩くその人に
視聴者のふりをして、「○○ちゃ〜ん!」と声をかけたら
「は〜い!」と即座に“テレビの顔”になったのを、よく覚えている。
自分がどんなコンディションでも、すぐに「○○ちゃん」になる様に、さすがプロだなと感動したし、天職なんだろうな。と思った。
だからかな。
その人が、進路に悩む日が来るなんて、微塵も思っていなかった。
私たちは出会ってから一緒にいくつかの仕事に取り組んで、刺しつ刺されつ。
その合間に色んなことを話して10数年がたった。
当時中堅アナウンサーだったその人は、最近、昇格をして部署を異動したという。
その会社では「出世したければ異動。アナウンサーを続けるなら昇進はなし」という2択で、希望で異動したようだ。
先日、久しぶりにテレビ局を訪れたので、近況を聞いてみた。
「昇進、おめでとうございます。
でも・・・ずっとアナウンサーでいたいとは思わなかったんですか?私、あなたはずっと喋っていたい人だと思ってました」
“憧れの職業”から、返ってきたのは現実感たっぷりの答えだった。
「いや、その道も考えたけど。。。ラインの管理職になった方が、先が長いなと思って」
「そうですか?あなたは食いっぱぐれないでしょう。
アナウンサーなんて誰でもなれる職業じゃないし、技術職だし。
定年後もナレーターとか司会とかの仕事で生きていけるんじゃないですか?あなたは顔もかなり売れているし。
私から見たら、あなたみたいな一本道のキャリアって羨ましいですけどね」
それはただただ、純粋な疑問。
私からみたその人は、喋ることが生きがいで、楽しくて、小さい頃からの夢を叶えて・・・。
死ぬまで真っ直ぐ進んでいくんだろうなと思っていたから。
だから、返ってきた答えには驚かされた。
「いやいや、そう言われるんだけどね。
私からしてみたら、一本道をず〜っと進んでったら、おっと!って。突然行き止まりが現れたわけよ」
「え?!そうなんですか?!」
そう語るその人は、今まで私が見てきたどの表情とも違っていた。
夢を叶えた、その先を聞くのは初めてだった。
「実は10年くらい前に、「アナウンス部を出てみるつもりはないか?」って打診があったんだ。
その時は、まだやりたいこともあったし、アナウンサー以外のキャリアは考えられなかった。
でも、今思うと、その時に出ていれば良かったと思う。
私は逆に、君のキャリアが羨ましいよ。
戻って来れる場所があって、その上で新しい道を開拓している状態が」
「隣の芝は青いってやつだと思いますよ。
・・・でも、あなたがそう思っていたなんて意外でした。
小さい頃から憧れの職種だったんだろうし、夢に向かって迷いなく、まっすぐ進んできた人だと思ってたから」
「そうだったんだけどねぇ。
あるとき、おっと!って現れた行き止まりを前に、右に行くか、左に行くか。この年で悩んでるわけよ」
両手を広げてコメディタッチに、自分の心境を語る。
憂いているのか、ワクワクしているのか。
どちらともつかない表情を残して、後輩が読む原稿の束を手に打ち合わせ室へ消えていった。
その背中を眺めながら、ふと夢について思いを馳せる。
夢っていったい何なんだろうーーーーーーーーー
夢さえあれば真っ直ぐ真っ直ぐ。どこまでも、進んでいけると思ってた。
羨ましかった一本道。
いや、正直いうと今でもやっぱり羨ましい。
ただ、一本道だからこそ、行き止まりに悩むのかもしれない。
一本道も楽ではないのだ。
夢は叶えたあと、どうなるんだろう?
「夢の見つけ方」「自分の才能を知る本」
“私の一本道”にしがみつきながら集めた自己啓発書にも、答えは書いてなさそうだ。
その答えをいつか自分で見つけたいから…。
今日も嫉妬の炎に焼き尽くされながら、それでも歩みを続けていく。
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他にもエッセイ書いてます。
キャリアに終わりがあるように、友人関係にも終わりがあることを知りました。
→友人に終わりを告げた日
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