友人に終わりを告げた日③

こんばんは。サナです。
今回は「友人に終わりを告げた日」、の第3話です。

▶︎参考:第1話第2話

友達も恋人も、近くなりすぎると良くないんですかね。
終わりたくて始めたわけじゃないんだけどなぁ。

―――――以下、転送――――――

朝がやってきた。
LINEをチェックすると、上の方に残っている彼女のトークルームが目に入って、少しの罪悪感が湧く。

「返事、返さなきゃなぁ・・・」

朝の支度をして、仕事に向かう間に返事を考えるが、良い答えは思い浮かばない。

気が重い。

彼女は、依存的なところがあった。
寄りかかれそうな人を見つけると、高頻度で連絡をとり、相手を疲弊させて、返事が返ってこなくなって、攻撃的になって、関係が終わる。
・・・という人間関係を繰り返していた。

ある時期、彼女が依存していた人とのやり取りについて

「もうちょっと寄り添って欲しいんですよね」

と話していたのが頭によぎる。

「サナさん、これどう思います?」
とLINEを見せられたが、最初は親身に相談に乗ろうとしていた相手が、彼女からの高頻度の連絡に、うんざりしていく様が見えた。

「それはちょっと自分勝手じゃないかな?
その人にはその人の生活があるわけだし、いつでも全力であなたに寄り添えるわけじゃないよ」

・・・と、本当の友達だったら、言ってあげられたのだろうか?

そんなくだりがあったから、寄り添った返事を書くのが、彼女の救いになるんだろうと思っていた。
分かってはいたけど、朝のうちに返事は書けなかった。寄り添うことに疲れていた。

夕方、また同じアイコンが光る。

「既読無視されてるし消しますね。
私に忖度するメリットがないことを理解されていらっしゃるのかなと思いました」

彼女のカウンセラーでいるのは、もう限界だったが、辛いのだろう。
気力を振り絞って返事を返す。

「返事遅くなってごめんね、正直、重い内容のラインだったから、しっかり考えてから返さなきゃなと思って・・・。できる範囲で力になりたいと思ってるけど、私にも自分の予定や気持ちの波があるから、ずっと全力で応え続けるのは難しい時もあるのを分かって欲しい」
「私はこれからも仲良くできたらいいなと思ってるよ。ただ、お互い無理しない関係を作れたらいいなっても思ってる」

今は、これ以上、付き合えません。という旨を柔らかく伝えたかった。
友達だからって、いつまでも、どこまでも、自分を切り売りできるわけじゃない。

スマホを机の端に置き、仕事に戻る。
すぐさま返事が返ってきた。

「別に全力で常に答えてほしいと思ってないです。サナさんがそんなに私のこと好きじゃないのは、なんとなく行動からわかっていました」
「約束にいつも遅れてくし私からしか基本誘わないから、嫌々来てくれていたんでしょう」
「私のこと考えてる風の嘘もつかなくて大丈夫ですよ!」

深いため息が漏れた。そして、怒りの気持ちが湧いてきた。
当日急に誘われたランチに、仕事をやりくりして駆けつけたこと。
私が話し始めても「分かります〜!私は〜」と自分の話に切り替えられたこと。
モヤっとしたこと。それでも、彼女が楽しいならまぁいいやと流したこと。

その全てに、彼女は嘘というラベルを貼ったのだ。

あんなに寄り添ってあげたのに。

湧き出てしまった自分の本音に恥じ入る。
“してあげた”と、心のどこかで思っていたのだろう。
逆に、彼女も、私が遅刻してくることで、自己肯定感をすり減らしていたのだろう。
その点は素直に申し訳なかったなと思った。

だた、この関係はもはや友達ではない。
「してあげた」「してくれない」と、お互いが思い合う。
それは友達であり続けるための必須条件、“対等”というバランスが崩れてしまった証に見えた。

私は彼女のトークルームを右にスライドして、そっと、非表示にした。

もう、いいや。

彼女のLINEを非表示にした瞬間、
「これ以上、彼女と関わっていきたくない」という自分の気持ちが無視できないくらいに育っていたことに気がついてしまった。

限界が来る前に、彼女との境界線を引くべきだったのだろうか。
私に矛先が向く前に、指摘するべきだったのだろうか。

トークルームを非表示にした後も、しばらくスマホを眺めていた。
どこかで分かっていた終わりをようやく認められた気がした。

自分で割った、大事にしていたグラスを茫然と眺めるように、もう戻らない自分の気持ちを眺めていた。

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▶︎過去の話はこちら
友人に終わりを告げた日①
友人に終わりを告げた日②