2学期が始まった。
相変わらず、予備校に行かない選択をした私は、その分、授業をきちんと聞くようにした。
授業中に漫画は読まない。
席を選べる授業は先生の目の前をとる。
放課後は「秘密の部屋」で学校が閉まるまで勉強する。
成績は自分でも驚くスピードで伸びていった。
秋の実力テストの数学は100点だった。
答案を返す前に先生から「今回は100点がいます」と大々的に言われ、自分の名前が呼ばれる。
お調子者だった私は「っしゃーーーー!」とガッツポーズで立ち上がり答案を受けとった。
1教科でも崩れると、全部崩れそうだったから、音楽とか体育とか、実技科目の試験対策もきちんと取り組む。
「全てのことに全力で」を自分のキャッチフレーズにしていた。
とにかく、前に進むしかない。
.
秋の東大模試の会場は予備校だった。
まだ合格ラインには届かないが、自分と東大の距離感は分かるようになっていた。
模試が終わって、ざわつく廊下に出る。
知らない人でごった返した廊下を牛歩で進んでいると、突然名前を呼ばれた。
「サナちゃん・・・?」
「神!」
振り返ると、学年1位の秀才・神崎さんがいた。
名前と、成績、そしてどこか達観した雰囲気から、みんなから「神」と呼ばれていた。
神は小柄で細身、そして霞がかったような声で、つぶやくように話す。
「サナちゃんも東大受けるの?」
「うん」
神はまっすぐ私を見つめた。
少しだけ、距離がある。
「そっか。うちの学年からは私だけだと思ってた」
うちの高校から東大に行くのは、毎年1人いるかいないかだった。
「一緒に、頑張ろうね」
「・・・うん」
それ以上共通の話題もなかったから、そそくさと予備校を出る。
バスを待つ風は、もう秋になっていた。
そうか。東大って、神クラスの人が受ける大学なんだよな。
神と会ったことで、今まで「名無しさん」だった自分以外の東大受験者たちが、急に具現化したのだった。
――――1年生から学年トップを守り続けている秀才。
自分とは違う存在だと思っていた。
でも、神に並ばなければ、合格できない。
バスに揺られながら考える。
神の隣まで、あとどのくらい?
――――――――――
神は3年間同じクラスだったんですが、この時まできちんと話したことはなかったんですよね。
ただすごく覚えている光景があって・・・。
高校1年生の序盤、私が「授業についていけない」と初めて感じた授業後の休み時間、神は先生に質問していたんですよね。
あの頃から東大目指してたのかなぁ。
今、神との交流はないんですけど、今会えるなら、あの頃話せなかった色んなこと、話してみたい気がしますね。
「私のこと、無謀だと思った?笑」とか。
始めから読みたい方はこちら。
①始まりは魔女の家
②誰もいない教室で
③秘密の部屋を手に入れた
続きは今後更新します。
★更新情報はXで→ サナ






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