あの日東大に落ちた私へ⑥〜束の間のメリークリスマス〜


東大を目指してたあの冬は、よく雪が降っていた気がする。


あっという間に冬休みがやってきた。
秘密の部屋で勉強を続けていると、大きな窓の外に雪がちらつく日が増えた。

朝、登校して秘密の部屋のヒーターのスイッチを入れる。
「ボッ」という音とともに石油が燃える匂いが充満した。


秘密の部屋には相変わらず私しかいなかった。
冬休みに登校した牛込がたまに様子を見にきて、
そして週に何度かは、るーちゃんが来る。


お昼を食べる40分間以外は、雑談は一切せず、黙々とそれぞれの勉強を続けていた。


だけど、あの1日だけは違った。


12月24日。


昼、るーちゃんといつもお昼を買いに行くコンビニは、クリスマスムード。
サンタの格好をした店員さんに、並べられたケーキとチキン。

「クリスマスっぽいことしよう!」


るーちゃんと私、どちらからともなく提案して、二人で割り勘してホールケーキを買った。
雪みたいに真っ白な生クリームに、サンタとトナカイの砂糖菓子。
私たちにとっては、ちょっと勇気がいる買い物だった。

教室にいそいそと持ち帰ったけど、お皿なんてない。
100均で紙皿を買うなんて無駄遣いはできない。


「このままいっちゃお!」
「イェーーーーイ!!!」

箱から出したままの、ホールケーキに飛びつくように直接フォークを突き立てる。
こんな食べ方初めてで、テンションもぶち上がる。

るーちゃんと私のお昼の鉄板トーク「文京区でのルームシェア」にも花が咲いた。

サナ「来年はさ、二人で東京で、こうやってケーキ食べれるといいね!」
るー「彼氏できてて、一緒にいないかもよ?」
サナ「え〜!そしたら24日は遊んでいいから、25日!どっちかは一緒に祝おうよ」
るー「冷蔵庫にホールケーキ半分だけ残しておくね」
サナ「ひどい〜!」


女子高校生2人にかかれば、ホールケーキなんてあっという間だ。
プラスチックのプレートが綺麗に空になって、妙な満足感と高揚感があった。


センター試験まで、あと3週間。
サンタさんはまだ来ない。

――――――――――――――

<あとがき>

あの年のクリスマスは、鮮明に覚えてますね。
初めて家じゃない場所で食べたホールケーキ。

あの感動をもう1回味わいたくて、社会人になってから1人でコンビニのホールケーキ買ってみたんですよ。
でもあの時ほどの感動はなかったなぁ。

若かったからなのか、るーちゃんといたからなのか。


続きは今後更新します。
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